私たちの日常のありとあらゆる場面で使われているシリコーン。姿も特徴も多様な形態に変化するため応用範囲は驚くほど広いです。今回はシリコーンを生成する「ケイ素」という元素の特徴と、シリコーンができるまでを紹介したいと思います。
ケイ素(Si)は無機化学の主役
シリコーンはケイ素を構成元素に含む有機化学物質です。ケイ素の原子記号はSiと表記され、原子番号は14、質量数は約28です。シリコンはケイ素(Si)のことですが、シリコーンはケイ素をもとに作り出された人工の化合物です。シリコーン(Silicone)の語源は、炭素–酸素結合を有する有機化合物ケトン(Ketone)の、炭素原子をケイ素原子に置き換えた化合物を意味するシリコケトン(Silicoketone)から来ていると言われています。また日本語では「珪素」や「硅素」と表記し、「ケイ素」と呼ばれています。
ケイ素(Si)の地球表層部に存在する重量比率(クラーク数)は25.8%で酸素の49.5%に次いで多いです。地球の主要な構成元素となっています。ケイ素は地殻から無尽蔵に採取できるため、資源の枯渇の心配がありません。しかしケイ素は元素単位では天然に存在することはなく、ケイ石と言われる二酸化ケイ素の形で産出します。ケイ石に含まれるケイ素(Si)と有機化合物を組み合わせることで、「シリコーン」が出来上がります。
多様な形態をとる「シロキサン結合」
シリコーンはシロキサン結合のつながり方によっていろんな形に姿を変えることができます。「シロキサン結合」とは、シリコンと酸素で構成される結合のことを指します。シリコンと酸素は親和性が高く、炭素と酸素の結合と同様に、共有結合によって結びついています。このシロキサン結合のつながり方によっていろいろな形に変えることができます。がシロキサン結合が1列に並ぶとオイル状のシリコーンオイルに、オイルがところどころ他のオイルと手を繋ぐとゴム状のシリコーンゴムに、シロキサン結合が三次元的に広がるとレジン状のシリコーンレジンになります。
熱に強いのはシロキサン結合のパワー
シリコーンはこのような分子構造から、無機と有機の両方の性質を兼ね備えた、ハイブリッドな化合物であることがわかります。その特徴は、耐熱性、耐候性、化学的安定性、電気絶縁性、撥水性、消泡性、離型性、耐寒性などさまざまです。特に他の樹脂と比べて熱に強いのが特長です。
シリコーンを構成するケイ素と酸素はお互いに強く引き合う性質があり、その結合は炭素と炭素の結合の強さに比べ約25〜60%ほど強く、高温の環境下でもその結合が壊れることはありません。
一般的な有機化合物は炭素と水素の共有結合によって構成されており、これらの結合は熱に対して弱いため、高温環境下で劣化することがあります。一方、シリコーンは、シロキサン結合によって構成されているため、熱に対する耐性が非常に高く、高温環境下でも強度を維持することができます。
結合エネルギーの比較(炭素結合の強さを1とした場合)
耐熱性に優れているが、有毒なガスを発生しない
このように耐熱性に優れたシリコーンですが、有機化合物であることに変わりはなく、一般的な有機系材料と同様に燃焼します。化学的安定性が高いことから、一般的な有機系ゴムのように黒煙や有毒なガスの発生がほとんどなく、燃焼後はシリカ(SiO2)が残ります。
安全性が要求される用途に幅広く使用されています。
(ただし、シリコーンによって製造された製品の中には、製造過程で使用される化学物質によっては、有毒なガスが発生する場合があります。また、シリコーン製品の成分や添加物によっては、化学反応によって有毒な化合物を生成する可能性がある場合もあります。)
このようにケイ素はそれ自体が天然に存在することはありませんが、その分子構造から実に様々な特徴を兼ね備えていることがわかります。
シリコーンテクノはシリコーンゴムをコアとした、精密ゴム製品作りを得意としています。シリコーンに関することならなんでも、お気軽にご相談ください。
参考文献:
『シリコーンとシリコーンの科学』B&Tブックス日刊工業新聞社
『シリコーン大全』日刊工業新聞社
『トコトンやさしい!シリコーンの本』日刊工業新聞社