シリコーンの基本構造「らせん構造」とは「メチル基」とは?

公開日 2023.02.28
<strong>シリコーンの基本構造「らせん構造」とは「メチル基」とは?</strong>

前回はシリコーン生成のための「ケイ素」の特徴と「シロキサン結合」についてお話しました。今回はシロキサン結合と並んでシリコーンの基本構造となる「らせん構造」と「メチル基」についてお話します。多様な界面特性を持つシリコーンの性質であるこれらの構造の特異性を紹介します。   

シリコーン骨格のイオン性である「らせん構造」

ケイ素は電子を引き付ける強さが酸素と比べ小さいです。そのため、シリコーン骨格はケイ素がプラスに、酸素がマイナスに大きく偏り、イオン性の性質を持っています。イオン性を持たせることによって、表面に生じる静電気や界面活性剤の影響を受けにくくなります。

またシリコーンはイオン性の高いSi-O結合を骨格部分に持ち、非イオン性の有機基が骨格に結合したような構造を持っています。そのうえで、Si-O結合を内部に向け、有機基を外に向けることで「らせん構造」しています。このらせん構造は、イオン性の引き合う力を安定させ、Si-O結合が6個で1回転すると言われています。

らせん構造とは

らせん構造とは、簡単に言うと「バネのような構造」です。温度が高くなると、らせん構造(バネ)は伸び、温度が低いと縮みます。バネが伸びて長くなると、分子間の抵抗ができるため分子は動きにくくなり、粘度も高くなります。逆に、バネが縮んで短くなると、分子間の抵抗が減るため分子の動きが激しくなり、粘度が低くなります。

メチル基

シリコーンの性質には「シロキサン結合」「らせん構造」そして「メチル基」があります。

メチル基は、化学式がCH3で表され、炭素原子が3つの水素原子によって置換された構造を持つ有機化合物の官能基の1つです。族炭化水素の側鎖にある場合など、様々な有機分子の中に存在します。表面を覆っているメチル基の作用により表面張力が低く、浸透しやすく、撥水に優れます。有機化合物に溶けることがほとんどないことから、離型性を発揮します。

特異な性質を発揮

らせん構造やメチル基といった分子構造により、シリコーンは撥水性、消泡性、離型性などの界面特性に優れています。また酸素透過性が大きく、諸特性の温度依存度が小さいなど、一般の樹脂にはみられない特異な特性を持っています。

撥水性…高い耐熱性や耐候性を持つため、高温や紫外線にさらされる環境でも劣化しづらく、撥水性を持続的に維持することができます。

消泡性…シリコーンは泡を消したり、泡の大きさを整えたりするなど、泡をコントロールすることができます。液体中に発生する泡を効果的に除去することができるため、液中の品質や性能を維持するのに役立ちます。

離型性…金属やプラスティックなどの物質同士が簡単にくっつかないようにしたり、粘着性の高いものを簡単にはがしたりすることができます。

液体は通さず、空気だけを通す

シリコーンは分子構造の主鎖を構成するSi-O結合が屈曲しているので自由に回転しやすく、側鎖のメチル基が高分子同士の相互作用を抑制しているため、ミクロ的隙間が多い高分子です。したがって期待がそのミクロの隙間を通過しやすいです。しかもシリコーンは通常の空気中の酸素濃度21%から酸素を特異的に通過させられるため、酸素富化膜材として使用されます。

このような特異的な酸素透過性を利用した例には、コンタクトレンズがあります。

角膜に必要な酸素を効果的に満たすことができるため、角膜の健康を維持しやすく長時間の装着が可能です。表面の汚れや傷がつきにくいため、清潔でクリアな視界を維持しやすいです。視力矯正と目の安全を両立しています。

シリコーンの持つユニークな構造と性質はわかっていただけたでしょうか?

シリコーンはこうした基本構造の特性を活かして、姿も特徴も多彩に変えることができるため、あらゆる産業分野で幅広く活躍しています。

シリコーンテクノはシリコーンゴムをコア事業とし、各種精密部品を製造・販売しています。長年培ってきた経験と技術を基に高精度の精密シリコーンゴムをお届けします。シリコーンに関することならなんでも、お気軽にご相談ください。


参考文献:
『シリコーンとシリコーンの科学』B&Tブックス日刊工業新聞社
『シリコーン大全』日刊工業新聞社
『トコトンやさしい!シリコーンの本』日刊工業新聞社

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