なぜシリコーンは安全なのか?その化学的特性を解説

公開日 2025.04.15
なぜシリコーンは安全なのか?その化学的特性を解説

医療器具、調理器具、化粧品、育児用品、さらには建築資材や電子機器まで。現代生活のあらゆるシーンに登場する「シリコーン」という素材。なぜこれほどまでに多くの場面で使われているのでしょうか。
その答えは、「高い安全性と信頼性」にあります。シリコーンは、非常に安定した化学構造を持つ素材であり、高温や紫外線、酸化、化学薬品などの外的要因に対して優れた耐性を持っています。
また、人体との相性が良く、アレルゲン性や毒性が極めて低いため、医療や食品といった“安全性が最も求められる分野”でも使用が認められています。
本コラムでは、シリコーンがなぜこれほど安全なのかを、「化学的特性」という観点からわかりやすく解説していきます。

1.シリコーンとは何か? ― 基本構造と分類

1-1. シロキサン結合がもたらす安定性

シリコーン(Silicone)は、ケイ素(Si)を中心にしたシロキサン結合(–Si–O–Si–)を基本骨格に持つ高分子化合物です。
一般的な有機高分子(プラスチックなど)が炭素(C)を主骨格にしているのに対し、シリコーンは無機のケイ素と酸素による結合をベースにしている点が最大の特徴です。
このSi–O結合は、C–C結合やC–O結合に比べて非常に強く、エネルギー的にも安定しています。
このため、熱や紫外線、化学的な分解に対して高い耐久性を示します。

1-2.種類によって特性が変わる性能

シリコーンにはさまざまな形態があり、用途によって選ばれます。たとえば:

シリコーンオイル:流動性が高く、潤滑剤やスキンケア製品に使用。

シリコーンゴム:柔軟性があり、耐熱性も高く、調理器具や医療用部品に多用。

シリコーンレジン:硬化性が高く、コーティング材や接着剤に利用。

このように形態を変えることで、柔軟性、密着性、透明性などの物理的特性を自在に調整することができるのも、シリコーンの優位性です。

2.なぜシリコーンは安全なのか? ― その化学的根拠

2-1. 安定した分子構造による「非反応性」

シリコーンが「安全」とされる最大の理由は、その化学的非反応性にあります。
シロキサン結合は、酸や塩基、酸化剤、還元剤といった多くの化学物質に対しても安定しており、分解・変質しにくいのです。
つまり、他の物質と反応しにくいため、有害物質を生じにくいという特性があります。
これが医療用途や食品接触用途での信頼性につながっています。

2-2. 熱にも強い ― 高温下でも安全性を維持

一般的なプラスチックは100~150℃で軟化・劣化してしまいますが、シリコーンゴムは200℃以上の高温でも形状や性質を保ちやすいため、電子機器の絶縁材や耐熱容器としても活躍します。
さらに、燃えても有害ガスをほとんど発生せず、一部のグレードでは「自己消火性」を持つものもあり、安全性の高い素材として評価されています。

2-3. 体内・皮膚との高い親和性

医療機器やコンタクトレンズ、人工乳房など、直接人体に触れる用途にも使用されるシリコーン。その理由は、生体適合性の高さです。

アレルゲン性が低い

細菌の繁殖を抑制しやすい

皮膚への刺激が少ない

これらの特性により、ベビー用品、スキンケア製品、医療グレードのシリコーン製品が世界中で使用されています。

3.各分野に見る「シリコーンの安全利用」

3-1. 医療分野 ― 人体に使える唯一のポリマーの一つ


カテーテル・人工関節:長期間体内に留置しても炎症を起こしにくい。

シリコーンインプラント:美容外科や再建手術で信頼されている。

コンタクトレンズ:酸素透過性と柔軟性の両立。

これらはすべて、シリコーンの「反応しにくさ」と「安定性」があるからこそ成立しているのです。

3-2. 食品分野 ― 調理器具から離乳食用アイテムまで

シリコーンは、食品衛生法にも適合するグレードがあり、高温・低温でも有害物質を出さない特性を活かして次のような用途で使われます。

シリコーンスチーマー、ケーキ型

赤ちゃん用のスプーンやおしゃぶり

哺乳瓶の乳首やキャップ

洗浄もしやすく、繰り返し使えるため、環境面でも優しい素材です。

3-3. コスメ分野 ― 肌になじむ快適なテクスチャー

ファンデーションや化粧下地、日焼け止めには、シリコーンオイルがよく使われています。

肌への密着性が高く、のびが良い

ベタつかず、さらっとした仕上がり

刺激が少ないため敏感肌でも使いやすい

このように、機能性と安全性を兼ね備えた原料として評価されています。

4.未来の素材としてのシリコーン ― サステナブルな展望」

安全性だけでなく、環境負荷の低さも今後の素材選定では重要になります。

長寿命で再利用可能

焼却時に有害ガスが出にくい

高温下でもマイクロプラスチック化しにくい

こうした特性から、シリコーンは“環境に優しいプラスチック”とも言われ、サステナブル素材としても注目されています。
さらに、研究開発が進むことでバイオ由来のシリコーンや、分解可能なシリコーンポリマーの開発も進行中。
将来的には、より地球にも人体にも優しい「第4世代シリコーン」が主流になるかもしれません。

まとめ

シリコーンはそのユニークな化学構造により、他の素材では得られない非反応性・耐熱性・生体適合性を持ち、極めて高い安全性を実現しています。
その信頼性は、医療、食品、育児、化粧品、電子機器など、安全性が最も重視される分野での採用実績が証明しています。
今後の素材選びにおいて「安心・安全」がより重要視される中で、シリコーンはますます存在感を高めていく素材になるでしょう。

シリコーン製品の詳細や購入については、シリコーンテクノにお気軽にお問い合わせください。

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