電気自動車(EV)やスマートデバイス、再生可能エネルギーの蓄電など、
現代の技術革新を支えるリチウムイオン電池。
その進化と普及の陰には、電池そのものだけでなく、その周囲を支える「素材」の技術革新があります。
中でも注目されるのが「シリコーン」。
電池の性能維持や安全性の向上に欠かせない存在として、あらゆる場面で活躍しています。
本コラムでは、リチウムイオン電池分野におけるシリコーンの基本的な役割から応用、そして未来に向けた展望までをご紹介します。
1.リチウムイオン電池を支える“縁の下の力持ち”
1-1. 高い絶縁性と密封性
リチウムイオン電池は高電圧・高エネルギー密度を扱うため、万一の短絡や異物混入が深刻な事故につながる可能性があります。
シリコーンは体積抵抗率が極めて高く、電極やセル間の絶縁材として効果を発揮。
さらに、水分や酸素などの侵入を防ぐ優れた密封性により、電解液の劣化や膨張ガスの発生を抑えることができます。
高温多湿な環境下でも安定した性能を保つため、長期的な安全性と信頼性の向上に大きく貢献しています。
1-2.熱対策に優れた放熱素材
充放電を繰り返すリチウムイオン電池では、内部で多くの熱が発生します。
この熱を適切に外部へ逃がすことが、性能維持や安全確保に直結します。
シリコーンは、熱伝導性フィラー(アルミナ、窒化ホウ素、酸化マグネシウムなど)を複合することで、5W/m・K以上の高熱伝導性を実現する製品も存在。
EVのような高出力環境でも、安定した熱管理を可能にします。
また、柔軟性が高く、振動や熱膨張にも追従できるため、構造材との間に生じるストレスを緩和しながら機能を果たします。
2.実際の応用と広がる活躍の場
2-1. 放熱・絶縁・接着のマルチ機能材
バッテリーパック内部では、狭小な隙間を埋めるギャップフィラーや、構造体とセルの間に敷かれる放熱パッドなど、さまざまな形状・粘度・物性を持つシリコーン製品が使用されています。
シート状・グリース状・液状など、その加工形態の豊富さも強みであり、設計の自由度を高めながら、製造工程への適応性も確保。
高い絶縁性と放熱性を同時に備えることで、複雑化する電池構造をシンプルに設計する一助となっています。
2-2. バッテリー構造部の封止と固定
シリコーンは接着剤やシール材としても活用されています。セル同士の固定、筐体との接合、防水・防塵対策など、構造的・環境的な安定性を確保する役割を果たします。
特に屋外使用や車載用途では、防水規格(IP67/IP68)への対応が求められる場面が多く、シリコーンの柔軟かつ耐候性の高い性質が効果的です。
中性硬化型の製品も多く、電池内部の化学反応に干渉せず、長期使用においても素材や接点を損なわない点が評価されています。
3.次世代電池技術とともに進化するシリコーン環境配慮
3-1. 全固体電池・高エネルギー密度セルへの対応の推進
今後の主流と目される全固体電池や、高ニッケル型(NCM811など)の高容量セルでは、さらなる耐熱性・難燃性・信頼性が求められています。
これに応じて、シリコーンも難燃性(UL94 V-0相当)、高熱伝導性(10W/m・K級)、薄型化、さらには自己修復性などの機能を持つ高機能化製品が登場しています。
電池の安全性能と小型化・軽量化を両立するためのキーマテリアルとして、その重要性は年々増しています。
3-2. 環境対応とリサイクル性の向上
シリコーンは化学的に安定し、耐久性が高い一方で、近年では“環境負荷の低減”という課題にも対応が求められています。
解体がしやすくリユース可能な剥離型接着剤、揮発性有機化合物(VOC)を含まないグリーン設計、生分解性素材との複合化など、持続可能な素材としての開発も進行中です。
EUのバッテリー規則や各国の環境法規制への適応を見据え、電池リサイクルの効率化に貢献するマテリアルとしても注目されています。
4.エネルギー社会の進化を支える“信頼の素材”として
4-1. 信頼の素材として
リチウムイオン電池の用途は、EVやスマートフォンだけでなく、住宅・オフィスの蓄電、ロボティクス、医療・航空・海洋分野などへとますます広がっています。
それに伴い、シリコーンには「熱伝導性」「絶縁性」「密封性」「接着性」を同時に満たす多機能性が求められ、材料選定の段階から重要な戦略材料となっています。
加工性、成形性、構造との親和性に優れるシリコーンは、今後もあらゆるバッテリー技術において、性能・信頼性・持続性を支える基盤素材であり続けるでしょう。
まとめ
リチウムイオン電池をめぐる進化の裏側には、シリコーンという“機能性素材”の存在があります。
絶縁、放熱、密封、接着といった複数の要求性能を高水準で満たしながら、次世代電池や環境対応技術との親和性も高いことから、今や単なる補助材料ではなく「戦略的コア材料」としての地位を確立しています。
エネルギーの安全・効率・持続性を支える素材として、シリコーンは今後もリチウムイオン電池の未来を形作る重要な役割を果たし続けることでしょう。
シリコーン製品の詳細や購入については、シリコーンテクノにお気軽にお問い合わせください。