シリコーンが持つ高い耐薬品性とその応用

公開日 2025.09.29
シリコーンが持つ高い耐薬品性とその応用

化学産業や医療分野、さらには半導体製造に至るまで、私たちの生活を支える多くの現場では「薬品にさらされても劣化しにくい素材」が求められています。
酸やアルカリ、有機溶剤は便利である一方、金属や有機高分子を短期間で劣化させる原因にもなります。
こうした過酷な環境において注目されているのがシリコーンです。
シリコーンは耐熱性だけでなく、化学的に安定した分子構造を持つことで薬品に強く、長期的に使用できる素材として幅広い産業で利用されています。
本コラムでは、シリコーンの耐薬品性の特長とその応用、今後の展開について解説します。

1.なぜ薬品環境でシリコーンが選ばれるのか

1-1.化学的に安定したシロキサン骨格

シリコーンは「Si–O–Si(シロキサン結合)」を主骨格とするため、炭素系高分子に比べて酸やアルカリによる分解が起こりにくい特徴を持っています。
このシロキサン結合は、炭素–炭素結合よりも結合エネルギーが高く、化学的に非常に安定しています。そのため、酸性・アルカリ性の溶液や各種薬品にさらされても分子鎖が切断されにくく、物性の劣化が緩やかに進みます。
加えて、シリコーンは分子の柔軟性が高いため、環境の変化に対しても構造全体がストレスを分散しやすいという特性があります。
この性質は、酸やアルカリによる膨潤・劣化が早い天然ゴムや有機高分子と比べると大きな優位性を持ちます。
結果として、化学プラントや医療分野、半導体製造の現場において「交換頻度の少ない長寿命素材」として採用されているのです。

1-2.他素材との比較優位性

天然ゴムや一般プラスチックは、酸や有機溶剤に触れると分子鎖が切断されたり、内部に薬品が浸透することで膨潤・劣化を起こすことが多く、硬化やひび割れ、寸法変化につながります。
一方、シリコーンは化学的に安定したシロキサン骨格を有するため、こうした環境下でも柔軟性や形状を長期間維持しやすいという特長を持っています。
その結果、「交換頻度が少ない」「装置全体の信頼性が高い」といったメリットが得られ、メンテナンスコストの削減や稼働率の向上にも寄与しています。

2.耐薬品性が活きる応用分野

2-1. 化学プラントでのシール材

薬液を扱うポンプやバルブでは、わずかな漏れが大きな事故につながります。
シリコーン製のガスケットやOリングは、酸・アルカリにさらされても長期間密封性を保ち、メンテナンス負荷の低減に貢献しています。。

2-2. 医療・ヘルスケア製品

医療分野では、薬液や消毒液に繰り返し触れる器具や部品にシリコーンが広く用いられています。
点滴用チューブ、カテーテル、人工呼吸器部品といった医療器具は、薬液や高温蒸気・消毒処理に耐えることで、患者の安全と清潔性を長期にわたって確保することが可能です。
また、シリコーンは生体適合性にも優れているため、人体に直接触れる用途でも安心して使用でき、医療現場における信頼性の高い素材として位置付けられています。

2-3. 半導体・エレクトロニクス

半導体製造工程では、強酸や有機溶剤を使った洗浄やエッチングが欠かせず、装置部品は常に薬液や蒸気にさらされています。
シリコーンはこうした薬液に対して優れた耐性を持つため、装置内部のチューブやシーリング材に採用され、長期にわたり安定した稼働を可能にしています。
その結果、不具合や汚染リスクを低減し、製造プロセスの歩留まり向上や装置の信頼性確保にも大きく貢献しています。

3.進化する耐薬品シリコーン

3-1. フッ素変性シリコーン

近年では、シリコーンの耐薬品性をさらに高めた「フッ素変性シリコーン」が開発されています。
分子構造の一部にフッ素を導入することで、非極性溶剤や油脂に対しても分解や膨潤が起こりにくくなり、従来のシリコーンでは対応が難しかった環境でも安定した性能を発揮できるようになりました。
その結果、航空・宇宙分野や特殊化学分野といった、薬品や燃料に長期間さらされる厳しい条件下での利用が進み、装置の耐久性や安全性向上に大きく貢献しています。

3-2. 環境に配慮した新素材

近年では、低VOCタイプやリサイクル可能なシリコーンも登場しており、薬品耐性と同時に環境性能も重視される時代になっています。
これらの新素材は、従来の高性能シリコーンの特長を損なうことなく、揮発性有機化合物(VOC)の排出を抑えたり、使用後に回収・再利用できたりするため、環境規制の厳しい現場でも安心して使用できます。
耐薬品性と環境配慮を両立できることは、化学プラントや医療現場、半導体産業など、幅広い分野で持続可能な運用を可能にする大きなメリットとなっています。

4.今後の展望と課題

4-1. 克服すべき課題

シリコーンは多くの薬品に強いものの、強酸化剤や特定の有機溶剤には弱点があります。
今後は、こうした限界を克服する改質技術の進歩が期待されています。

4-2. 拡大する市場

シリコーン素材は年々、医療分野の高齢化需要・半導体産業の成長・化学プラントの安全性向上など、あらゆる領域で耐薬品性素材へのニーズは高まっています。
シリコーンは、その中心的役割を担う存在であり続けるでしょう。

まとめ

シリコーンは、化学的に安定した分子構造を背景に、酸やアルカリ、有機溶剤といった薬品に対して優れた耐性を発揮します。
その特性は化学プラント、医療機器、半導体産業など幅広い分野で活かされており、改質技術や環境対応型シリコーンの登場によってさらに応用範囲が広がっています。
薬品にさらされても「長寿命で信頼性を保てる」シリコーンは、今後も産業と社会の安全を支える重要な素材となるでしょう。

シリコーン製品の詳細や購入については、シリコーンテクノにお気軽にお問い合わせください。

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