現代の産業や生活製品に欠かせない素材として、シリコーンとプラスチックは幅広く活用されています。
日常的に使う容器や家電製品から、自動車部品や医療機器といった専門分野まで、その用途は多岐にわたります。
両者は一見似ている部分もありますが、根本的な化学構造や特性の違いによって、耐熱性や柔軟性、耐久性に差が生じます。
そのため、利用される分野やシーンも自ずと異なってきます。
以下では、主要な用途別に両者の利点を整理し、それぞれの強みを比較していきます。
1.耐熱性と耐久性
1-1.プラスチックの特徴
プラスチックは軽量で加工性に優れ、低コストで大量生産できるのが大きな魅力です。
しかし、一般的な熱可塑性プラスチックは高温に弱く、100℃前後を超えると軟化・変形が生じやすくなります。
耐熱グレードのエンプラ(エンジニアリングプラスチック)も存在しますが、長時間の高温環境では劣化や寸法変化が避けられません。
1-2.シリコーンの特徴
シリコーンは「Si–O–Si結合」という無機的な骨格を持つため、200〜250℃といった高温下でも安定した特性を維持できます。
また低温にも強く、–50℃でも柔軟性を失いにくいのが特長です。
自動車のエンジン周辺部品、調理器具のパッキンやオーブン用部材など、熱環境の厳しい用途で信頼性を発揮します。
2.柔軟性とシール性
2-1. プラスチックの特徴
プラスチックは硬さや剛性を設計段階で自由に調整できるため、容器・ケース・機械部品など「形を保持する」用途に適しています。ただし、柔軟性や弾性を要求される場面では、専用の可塑剤を加える必要があり、長期的には硬化や脆化を起こしやすい点が課題です。
2-2.シリコーンの特徴
シリコーンはゴムのように高い柔軟性を持ち、長期使用でも硬化や劣化が起こりにくいため、シール材やパッキンとして優れた性能を発揮します。
気密性・防水性が求められる医療機器や食品容器、防水電子機器に広く利用され、柔らかさと耐久性を両立できる点が強みです。
3.耐薬品性と安全性
3-1. プラスチックの特徴
プラスチックの中には耐薬品性に優れた種類(例:フッ素樹脂、ポリプロピレン)もありますが、一般的なプラスチックは酸や有機溶剤にさらされると膨潤や劣化が進みやすい傾向があります。
また、劣化によって割れやすくなり、製品寿命を縮める要因となります。
3-2. シリコーンの特徴
シリコーンは酸・アルカリ・有機溶剤に対して高い安定性を持ち、腐食性の強い環境でも長期間性能を維持します。
このため、半導体製造装置のシーリング材、医療用チューブやカテーテル、化学プラントの配管部材など、安全性と耐久性が求められる分野で重要な役割を果たしています。
さらに、食品衛生法や医療用規格にも適合しやすく、人体に触れる用途でも信頼性が高い素材です。
4.成形性とコストパフォーマンス
4-1. プラスチックの特徴き課題
プラスチックは射出成形により短時間で大量生産できるため、コスト効率が非常に高い素材です。
電子機器の筐体や日用品、包装材など、大量消費型の製品に最も適しています。設計自由度も高く、複雑な形状を一体成形できる点も強みです。
4-2. シリコーンの特徴
シリコーンは加工にややコストがかかるものの、その分「長寿命」「高機能」という付加価値を提供できます。
例えば、自動車や航空宇宙分野では交換頻度を減らし、メンテナンスコストを削減できるため、トータルコストで見れば有利になるケースも少なくありません。
まとめ
シリコーンとプラスチックは、いずれも現代社会に不可欠な素材ですが、得意とする領域は大きく異なります。
プラスチックは、軽量・安価・成形性に優れるため、大量生産や短寿命製品に適している。
シリコーンは、高温・薬品・長期使用といった過酷な環境下で信頼性を発揮し、安全性や耐久性が重視される分野で強みを持つ。
つまり、両者は「どちらが優れているか」ではなく、「どの用途に最適か」という観点で選択されるべき素材です。
適材適所での活用により、より効率的で持続可能な製品設計が可能となります。
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