自動車部品におけるシリコーンの役割と未来展望

公開日 2025.11.30
自動車部品におけるシリコーンの役割と未来展望

自動車は今、多様な環境下で安全性と性能を維持するため、部材への要求がかつてないほど高まっています。
エンジン周辺の高温環境、電動化で増える制御電子部品、外装・内装の長期耐久性など、求められる特性は年々複雑化しています。
こうした中で、シリコーン材料はその安定性・柔軟性・耐熱性から、自動車のさまざまな部位で不可欠な存在となり、部品性能を底支えする重要な役割を果たすようになりました。
今回は、自動車分野におけるシリコーン材料の現在位置とこれからの進化の方向性について整理していきます。

1.高温環境における性能維持

1-1.従来の課題

自動車のエンジンルーム周辺は、金属部品や樹脂部品にとって過酷な領域です。従来の有機系ゴムや樹脂は、100〜120℃を超える環境では硬化・変形しやすく、ガスケットやホース類の気密性能が低下することで、オイル漏れや振動増加の原因となることがありました。
また、劣化速度が早いため、一定期間で交換が必要になり、メンテナンス負担の増加も避けられませんでした。

1-2.シリコーンの優位性

シリコーンは200℃クラスまで特性を維持できる耐熱性を持ち、低温域でも柔らかさと弾性を保つため、ガスケット・ホース・防振材などで高い信頼を獲得しています。
特に近年は、ターボ車やハイブリッド車のように温度変動が激しい車両が増える中、シリコーン系部材の採用が急速に進んでいます。
耐熱と耐久を両立できる点が、自動車部品の長寿命化に大きく貢献しています。

2.電動化による電子部品の増加と絶縁性能

2-1. 従来素材の限界

車載電子機器は年々増加しており、制御ユニット、センサー、バッテリー周辺部品など、高い絶縁性と耐環境性が求められる領域が拡大しています。
しかし一般樹脂の中には、温度変化や振動の影響で微細なクラックが発生しやすく、電子部品を十分に保護できないケースもありました。
また、湿気や薬品による腐食リスクも無視できず、信頼性の確保が課題となっていました。

2-2.シリコーンによる高信頼化

シリコーンは本質的に高い電気絶縁性を持ち、温度変化・湿気・振動に強いため、電子部品の封止材やパッキンとして最適な素材です。
特に、柔軟性の高いシリコーンゲルやポッティング材は、基板や配線を物理的な衝撃から守る効果があり、EV(電気自動車)やADAS(先進運転支援システム)の普及に伴い、採用が急速に広がっています。
電子化が進む自動車において、シリコーンは欠かせない安全性の基盤となっています。

3.車両の軽量化と快適性向上への寄与

3-1. 軽量素材の課題

自動車の燃費改善やEV航続距離の向上において軽量化は重要テーマですが、軽量樹脂や薄肉パーツは、強度や振動吸収性が不足することがあり、騒音や振動の増加につながることがありました。
特に室内の静粛性を高めるには、部材の密封性や柔軟性が大切になりますが、従来素材だけでは対応が難しい場面も存在しました。

3-2. シリコーンによる機能強化優位性

シリコーンは柔軟かつ耐候性に優れ、軽量化した車体部材の弱点を補う役割を担っています。
ドアや内装部品のシール材として使用されることで、気密性が向上し、車内の静粛性がアップ。
さらに、シリコーンフォームや防振材が振動を吸収することで、走行時の快適性向上にも寄与しています。
軽量化・省エネ化と快適性の両立を支える影の立役者と言えます。

4.持続可能な自動車づくりに向けた新展開

4-1. 自動車業界の環境課題

脱炭素の流れが強まる中、自動車メーカーはCO₂削減だけでなく、部材の環境負荷低減にも取り組んでいます。
従来のゴムやプラスチック部品では、製造時の廃棄物やVOCの排出が課題でした。
また、ライフサイクル全体での環境性能を高める必要があり、より持続可能な素材が求められています。

4-2. シリコーンの持続可能な未来

シリコーンは化学的に安定しているため長寿命で、交換頻度を抑えることで廃棄物削減に貢献します。
さらに近年は、製造工程の改善や低VOCタイプの開発が進み、環境負荷を抑えたシリコーン部材が登場しています。
加えて、EVや水素自動車向けの新規シリコーン材料の研究も進み、高温・高電圧・高湿度といった特殊環境への対応力が期待されています。
自動車の脱炭素化において、シリコーンは重要なキーマテリアルとなりつつあります。

まとめ

自動車分野におけるシリコーン材料は、耐熱性・絶縁性・柔軟性・耐久性といった多面的な性能により、エンジン周辺から電子部品、内装部材まで幅広い領域で不可欠な存在となっています。
電動化・自動化・軽量化といった自動車業界の大きな流れの中で、シリコーンはその特性をさらに発揮し、車両の安全性と快適性の向上に寄与し続けています。
今後は環境性能や高度な電気特性を兼ね備えた新素材の開発が進み、自動車の未来を支える“次世代マテリアル”として、シリコーンの存在感はますます高まっていくでしょう。

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