建築材料や電子デバイスなど多岐にわたる用途で活躍してきたシリコーン。
その中でも「高い透明性」を備えたシリコーン材料は、光学分野で近年大きく注目を集めています。
ガラスや一般樹脂とは異なる光学特性・耐環境性を同時に持ち合わせていることから、
次世代の光学機器に欠かせない素材として進化を続けています。
以下では、光学用途におけるシリコーンの特性と最新トレンドを分野別に整理します。
1.光透過性と可視性
1-1.従来素材の課題
一般的な樹脂(アクリル・ポリカーボネートなど)は、透明度は高いものの紫外線による黄変や細かな傷による白濁が起こりやすく、長期使用によって光学性能が低下しやすいという問題がありました。
また、熱による膨張や収縮の大きさも、光学部品としての精度維持に影響を与える要因でした。
1-2.シリコーンの光学的進化
高透明シリコーンは、可視光から近赤外領域まで高い透過率を維持し、さらに長期間黄変しにくいという特長を持っています。
最近では屈折率を高度に制御した「光学グレードシリコーン」が登場し、レンズ、ライトガイド、プロジェクターパーツなど精密光学用途で採用が進んでいます。
2.柔軟性と成形自由度
2-1. 硬質素材との比較
ガラスは透明性と均質性に優れるものの、加工性が低く、複雑形状のパーツを大量生産するにはコストがかか過ぎてしまう可能性があります。
また、樹脂は加工性は高いものの、前述の通り熱や紫外線で劣化しやすく、精密光学パーツとしての長期安定性に課題があります。
2-2.シリコーンの成形メリット
シリコーンは柔軟性を維持しながらも寸法安定性が高く、微細構造や複雑形状の光学部品を容易に成形できます。
近年では、シリコーンの柔軟特性を生かした
・ウェアラブルデバイス用の光導波路
・フレキシブルセンサー
・変形レンズ
といった新しい光学機構が開発され、従来にないデザインの製品が実現しつつあります。
3.耐熱性・耐環境性
3-1. 従来素材の限界
樹脂製光学パーツは、温度上昇による変形や透過率低下、紫外線での劣化が避けられず、特に高光量のLED照明や屋外光学機器では耐久性の課題が露呈していました。
3-2. シリコーンが提供する信頼性
シリコーンは–50℃〜200℃以上の環境でも性質が安定しており、光学性能の変化が少ない素材です。
これにより、LED照明のレンズや封止材、自動車用ヘッドライト、屋外監視カメラなど、高温・高照度・高UV環境でも長期耐久性が求められる用途で採用が一気に拡大しています。
4.光学設計の自由度と次世代技術
4-1. 光学材料の制約
従来の光学設計は、ガラスか樹脂を前提とした屈折率や形状の制約により、設計自由度が限られていました。
特に軽量化、小型化、複雑な光制御などの要求が強まる中で、従来素材では実現が難しいケースも増えていました。
4-2. シリコーンで広がる新展開
最近では、シリコーンの特性を活かした
・自由曲面レンズ
・軽量光学エレメント
・マイクロレンズアレイ
・柔軟光学フィルム
・近赤外光学センサー用パーツ
など、新たな光学機器が次々と登場しています。
さらに、シリコーンは3Dプリント材としても研究が進んでおり、光学デバイスの超短納期化・高精度化に向けて大きな期待が寄せられています。
まとめ
シリコーンの高い透明性・耐環境性・柔軟性・成形性は、これまでガラスや樹脂では対応が難しかった光学用途を大きく切り拓いています。
LED照明、自動車、ウェアラブル、センサー、医療光学デバイスなど、幅広い分野で採用が一気に加速しており、シリコーンは“次世代光学材料”の中核としてさらなる進化が期待されています。
今後も光学性能の向上や加工技術の進歩により、シリコーンは光学設計の自由度を一段と広げ、未来の光学機器の可能性を大きく押し広げていくでしょう。
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