電子機器の進化が加速する現代において、部品の小型化・高機能化・高密度化がますます進んでいます。こうした要求に応えるために、素材の信頼性や加工性、柔軟な対応力がこれまで以上に重要視されるようになっています。
その中で今、再び注目を集めているのが「シリコーン」という素材です。絶縁性や耐熱性といった基本性能に加え、製造現場での作業性、そして医療・通信分野など異業種領域への応用展開においても高いポテンシャルを持っています。
本記事では、電子部品分野におけるシリコーンの新たな価値と未来展望をご紹介します。
1.電子製造の現場を支える「加工性と信頼性」
1-1. 微細化への対応と量産効率
電子部品の小型化・高密度化が進む中、製造現場ではμm単位の精度と量産性の両立が求められています。
シリコーンは液状・ペースト状・ゲル状など多様な形態で提供可能で、精密ディスペンシングやモールド成形に対応。極小ピッチや微細構造への塗布・封止にも高い適応性を発揮します。
また、硬化時の収縮が少なく、寸法安定性に優れるため、成形後のばらつきが抑えられ、量産工程での歩留まり向上に寄与。
微細加工と量産性を両立できる材料として、幅広い分野で採用が進んでいます。
1-2.高温下でも安定する封止材
高性能プロセッサや通信モジュールでは、発熱への対応が重要課題となります。
シリコーンは、200℃以上の温度環境下でも安定した絶縁性と柔軟性を維持するため、放熱材・封止材・断熱保護など多様な役割で使用され、長寿命化にも寄与しています。
2.多様な分野での応用拡大
2-1.医療・ウェアラブル分野への進出
近年、人と直接接触する電子デバイスの需要が急増しており、使用材料には生体への安全性と信頼性が求められています。
シリコーンは生体適合性が高く、低アレルゲン性・化学的安定性に優れることから、皮膚接触型センサーや医療用粘着材、カテーテル部材などに広く採用されています。
また、柔軟で肌に優しいにもかかわらず、導電性・絶縁性のコントロールが可能であるため、体温・脈拍・心電図のモニタリング装置やウェアラブル医療機器にも適しています。
快適性と機能性を両立できる素材として、医療とテクノロジーの融合を支える存在となっています。
2-2. スマートホーム・IoTデバイスの信頼構築
家庭やオフィスでのスマート化・IoT化の加速により、機器はますます小型・高機能化しながら、長時間かつ無人環境下での安定稼働が求められています。
Wi-Fiルーター、スマートキー、スマートメーター、エネルギー管理センサーなどにおいては、外気温変化や湿気、振動といった環境ストレスに耐える設計が必要不可欠です。
シリコーンは、優れた防水・防塵性、熱安定性、振動吸収性を兼ね備え、これらの課題に高い信頼性で応えます。特に、電子部品の封止や絶縁材としての使用においては、電気的特性を長期間安定的に維持できるため、IoTデバイスの安全性・耐久性の確保に大きく寄与しています。
2-3. 産業機械・ロボティクス分野での信頼性向上
工場の自動化やロボット技術の進化に伴い、機器内部での精密制御・長時間稼働が一般化しています。
こうした現場では、センサー、制御基板、アクチュエーターなどの電子部品が、熱、振動、粉塵、油分といった過酷な環境下でも安定動作を求められます。
シリコーンは、高い絶縁性・耐熱性・耐油性・緩衝性を持つため、これら機器の電子基板保護材、パッキン、熱伝導材として幅広く活用されています。
とくにロボティクス分野では、柔軟性と耐久性を併せ持つケーブルジャケット材や関節部シール材としてのニーズも拡大しています。
3.次世代技術に寄与するシリコーンの素材力
3-1. 精密光学分野への対応
次世代通信や自動運転に不可欠な光通信・LiDAR技術では、光学部材に対して高い透過率、UV耐性、温度安定性が求められます。
光学グレードのシリコーンは、可視光や近赤外光の透過性が高く、変質しにくいため、光学センサーやLEDレンズの封止材、光導電部材の保護などに使用されています。
特に、硬質プラスチックやガラスと異なり、衝撃や温度変化に強い柔軟性を持ち合わせることで、長寿命化と精度維持の両立を可能にしています。
3-2. フレキシブルエレクトロニクスとの融合
折りたたみスマートフォンやウェアラブルデバイス、電子繊維といった新たな電子機器には、繰り返しの屈曲・伸縮に耐える材料が不可欠です。
シリコーンは高い伸縮性と応力緩和特性を持ち、導電性インクや柔軟回路基材として応用が進んでいます。
また、電気絶縁性・耐候性・生体適合性を同時に満たす特性により、長期使用を前提としたフレキシブル構造に適しています。
3-3. 熱マネジメント材料としての進化
次世代機器の高集積・高性能化に伴い、発熱部位の温度管理が設計上の重要課題となっています。
シリコーンは熱伝導性と柔軟性を併せ持つ材料設計が可能であり、ギャップフィラー、放熱パッド、熱伝導接着剤などとして幅広く活用されています。
特に、接触面の微細な凹凸を埋める性質により、放熱効率を最大化しつつ、機器へのストレスを軽減するという“熱と構造の両立”を実現しています。
まとめ
シリコーンと電子部品の融合は、もはや一部の産業領域にとどまらず、モビリティ(電動車・自動運転)、ヘルスケア(医療機器・ウェアラブルデバイス)、IoT、次世代通信(5G/6G)、光学デバイス、再生可能エネルギー分野へと拡大し続けています。
その優れた加工性、耐環境性、絶縁性、熱伝導性などの特性により、シリコーンは設計の自由度と製品の信頼性向上に貢献するキーマテリアルとなっています。
今後もシリコーンは、電子機器のさらなる高集積化・高性能化に寄与しながら、社会全体のスマート化を支える基盤技術の一つとして位置づけられるでしょう。
単なる「機能性素材」にとどまらず、システム全体に新たな価値をもたらす「価値創出素材」へと、その役割は進化し続けています。
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