シリコーンの驚くべき性質⑤酸素透過性

公開日 2023.05.26
シリコーンの驚くべき性質⑤酸素透過性

シリコーンは酸素透過性に非常に優れています。酸素透過性とは文字通り、酸素の浸透しやすさを意味しますが、ここではコンタクトが目にどれだけ多くの酸素を届けることができるのかを表します。その指標の一つとして、「酸素透過係数(Dk値)」があります。「酸素透過性が良い」=「酸素透過率が高いこと」を意味します。

液体を通さず、酸素だけを通す

シリコーンが酸素透過性に優れている仕組みは、その分子構造にあります。ケイ素原子に酸素原子とメチル基が結合したシリコーンの分子構造に由来しています。シリコーンはケイ素ー酸素結合が屈曲しているので自由に回転しやすく、側鎖のメチル基が高分子同士の相互作用を抑制しているため、ミクロ的隙間が多い高分子です。

そのミクロ隙間が多いため、酸素が通過しやすく、酸素透過率が高い素材となっているのです。天然ゴムの約30倍、塩ビ樹脂の2500倍の酸素透過性を誇ります。

酸素透過性を活かした用途

酸素透過性の代表的な例が「コンタクトレンズ」です。
コンタクトレンズの原型は、ルネサンス時代にレオナルド・ダ・ビンチによって発見されたといわれています。しかし実際に使われるようになったのは1880年頃、当時はガラス製のものでした。しかし初期のコンタクトレンズは装着時に角膜への酸素供給が不足がちでした。最悪の場合、感染症や角膜血管新生などの合併症を引き起こすことがあります。

1961年になると、水分を含む柔らかい素材を使用したソフトコンタクトレンズの製法が確立され、その後装用感が徐々に改良されてきました。シリコーン製のコンタクトレンズが登場しはじめたのは1990年代に入ってからです。

コンタクトレンズの種類

コンタクトレンズにはハードレンズとソフトレンズの2種類があり、それぞれ使用している素材が異なります。コンタクトレンズはさまざまな素材を組み合わせて作られています。酸素透過性の特性をもったもの、目の渇きを抑える水分量が多いもの、撥油性で防汚性があるものなどの特徴を持った素材を用います。

ハードレンズは、水分を含まない硬い素材で作られています。サイズが小さいので目への負担が抑えられ、酸素を通しやすいので目に優しいレンズです。シリコーンやアクリル系の素材がよく使われます。

ソフトレンズは、やわらかく目に馴染みます。ずれたり外れにくいのでスポーツなどでの使用にも適しています。1DAY(ワンデー)・2WEEKなどの使い捨てコンタクトレンズは、「ソフトレンズ」に該当します。HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)が多く使われています。

シリコーンハイドロゲル素材

近年では、ソフトレンズでもシリコーン素材を活用したものが注目されています。目の酸素が不足するとあらゆる眼病の原因になります。シリコーンは目への酸素透過性を向上させるので、眼障害を防ぎます。

シリコーンハイドロゲル素材とは、酸素透過率が高く、目の負担を軽減できる素材です。従来のハイドロゲル素材と比較して数倍〜数十倍といった優れた酸素透過性が可能となりました。裸眼に近い装用感を実現できるそうです。長時間使用しても酸素不足になりにくく快適に過ごせます。

また素材自体が酸素を透過させるので、涙液もコンタクトレンズに奪われにくくなりました。ドライアイ対策としても効果を発揮しています。

まとめ

シリコーンは酸素透過性に優れており、コンタクトレンズで活躍しています。目の細胞も呼吸しているため、酸素を与えないといけません。シリコーンを使用したコンタクトレンズにすることにより、瞳に十分な酸素を与えることができます。視力矯正と目の安全を両立できます。



当社はシリコーンゴム製品に関する開発・提案・製造・販売をコア事業とし、『安心・安全 且つ 環境に優しい』製品づくりを念頭に、独創的・合理的なご提案と製品をお客様にご提供致します。
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シリコーンに関することならなんでも、お気軽にご相談ください。


参考、引用文献:
『シリコーンとシリコーンの科学』B&Tブックス日刊工業新聞社
『シリコーン大全』日刊工業新聞社
『トコトンやさしい!シリコーンの本』日刊工業新聞社
『コンタクトレンズの歴史について【世界編・日本編】』アキュビューhttps://acuvuevision.jp/memamori/contact-lenses/035
『ゴムの気体(ガス)透過性』パッキンランド
https://www.packing.co.jp/GOMU/kitaitoukasei1.htm

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